自宅で回想法

認知症の方と長期療養中の

高齢者のための心のサプリ

自宅介護家族が開発した、患者と家族のためのお助けコミュニケーションツール

介護家族となり、片道120kmの介護〜自宅同居介護

介護を経験して、辛かったこと、不自由を感じたとなどを基に介護家族側からの視点で制作しました。

私の父は若い時に妻(私の母)を亡くしました。再婚の話もありましたが、まだ多感な妹がいましたので父は断っていました。妹が結婚した後は、友達と海外・国内の旅行を楽しんでいたように思います。そんな父に変化が訪れたのは、ひざの関節の不具合からでした。歩くことも少なくなり、腎臓結石で入院。ここから私の介護が始まりました。

毎週金曜の晩に仕事が終わると父のもとへ2時間かけて車で移動。土曜は溜まった下着などの洗濯をし、病院でのケア。日曜の夜に東京の自宅へ戻るという生活が毎週続きました。退院後も、ひざのリハビリや家事をすることが続き、体力的にもきつくなりました。

自分の親のことですし、当然のことと思い頑張っていましたが、経済的にも精神的にも疲れ果てました。

退院後は、以前から「東京で一緒で住もう」と言っていた言葉に同意してもらい同居することになりました。

同居するための荷物の整理、医者の手配など、妻が助けてくれて本当に助かりました。今でも感謝しています。

同居後は落ち着いた生活をしていましたが、今度は片方の肺が機能低価、近くの内科へ。そして、朝窓を開けに行くと、声をかけても返事がない。意識がなく救急車で救急病院へ運ばれました。幸い意識は戻りましたが、ふたたび入院が必要となりました。

毎日出社前と退社後に病院へ通い、週末はほぼ面会時間終了まで話し相手。2ケ月ほど経った頃に病院から転院を言われ、ケアマネジャーが受け入れてくれる病院を手配してくれました。これが何度か続き、転院も4回目となったある日、病院から様子がおかしいのですぐに来てくださいとのこと。急いで病院へ行くと呼吸が苦しそうで。。。しばらくすると呼吸が止まり、静かに息を引き取りました。

 

葬儀を終えしばらくすると、「もっと何かしてやれたのではないか?」と思うようになりました。

父の遺品の整理で写真をアルバムにしていたときのこと。介護施設で働いている方が(これ介護で使えないかしら?)との言葉で研究を始めました。写真を使用し昔を思い出す。回想法でした。

自宅での介護経験で、会話しなくては?と思いますが、その話題探しに苦勞した経験はありませんか?

最近のことは忘れてしまっても、昔の事はよく覚えている。高齢者になるとよく見られることです。

そこで、介護する方、される方双方に良いものを考えました。

カメラマンとしての本業の傍ら、コツコツ勉強し、色々な医療関係者の方々のご協力により

手軽に実践できる回想法として本製品が完成しました。

本ツールにより、認知症の方々の症状改善や介護されてる方々のご苦労が少しでも​軽くなれば幸いです。

回想法とは

1960年初期アメリカの老年医学者ロバート・バトラー氏により回想することが、認知症改善に効果があることがわかりました。

 日本では国立長寿医療センターの遠藤英俊先生、筑波大学臨床医学部の朝田隆先生、愛媛大学の谷口知先生などが臨床・研究をし、効果があることが実証されています。欧米では認知症の心理療法として一般的に活用されています。

効果としては、「話をするようになる」「活発になり外出を拒まなくなる」「顔色がよくなり表情が豊かになる」「生きる意欲が沸く」などが確認されています。

回想法には個人回想法とグループ回想法があります。

個人回想法は字のごとく、認知症患者1名と行うもの。グループ回想法は10名位で行います。

回想法の基本は、楽しい時の思い出を思い出すことです。そこから、話をひろげることで良い方向へと向かっていきます。悲しい記憶や辛い記憶は認知症に悪い影響を与えることもありますので注意が必要です。

監修:鈴 木   央

1987 年 3 月  昭和大学医学部 卒業
1991 年 6 月 同大大学院修了
1994 年 6 月 高津中央病院内科医長
1996 年 6 月 社会保険病院都南病院内科部長   1999 年 8 月 鈴木内科医院 副院長
2015 年        鈴木内科医院 院長

所属学会・認定医

◇    日本プライマリ・ケア学会

◇    日本在宅医学会

◇    日本内科学会

◇    日本消化器病学会

◇    日本消化器内視鏡学会

◇     日本緩和医療学会
一般社団法人 全国在宅療養支援診療所連絡会 副会長

「認知症のひとが感じる世界」

認知症という病気は記憶を失う病気です。最初は数分前のこと、そのうちに徐々に前のことを忘れてしまいます。やがて適切に行動することができなくなります。それは、現実と、その人が感じている世界がかけ離れてしまうためです。時には不安や恐怖のために大きな声を上げることもあるかもしれません。他のひとからの指示を守ることができず、一人で行動し、うまく行動できなくなることもあるかもしれません。
私は認知症のひと達を何人も拝見してきました。その中での学びは、認知症のひとは強い不安の中で生活しているということです。数分前のことを忘れてしまう世界はどのようなものでしょう。自分がいる場所も、なぜそこに来たのか、自分は何をやろうとしていたのか、忘れてしまうのです。とてつもなく不安であると思います。
また、自分の行動を叱られてしまうと、認知症のひとは理解できません。覚えていないからです。しかし、感情とその記憶は残ることが多いので、嫌な思いをしたことは蓄積されていくのです。時にはよく叱られたひとの顔を見るだけで怒りや不快の症状を見せることもあります。
ある研究者は、認知症のひとの感じている世界を「暗闇の中、懐中電灯だけを持って歩く旅人」と表現しました。真っ暗な中歩いています。今まで来た道を照らしてみても懐中電灯なので、よく見えません。これから向かう先もよく見えません。見えるのは自分の足元だけです。暗がりから悪い人や猛獣が出てきて、危害を加えられてしまう事もあるかもしれません。もしかするとこの道は断崖絶壁につながっているのかもしれません。少し道を踏み外せば、果てしない暗がりの中に落ち込んでいってしまうかもしれません。不安の中で歩き続けるしかないのです。
それでも、そばの人が穏やかで優しいと安心することができます。笑顔がこぼれ、穏やかに過ごすこともできます。また、過去の記憶も保たれていることが多いため、昔の話は饒舌にお話することができることも少なくありません。すると安心され、穏やかに過ごすことも稀ではありません。
そんな認知症のひとが過去のことを思い出し語っていただくことは、「回想法」と呼ばれる心理療法として、穏やかに過ごすために有効との医学的証拠もあります。「現在」のことや「未来」のことはうまく話せないかもしれません。考えると不安になってしまうかもしれません。それでも覚えている「過去」のことを思い出し、笑顔でそばのひとたちと語ることは、その人の自信を高め、生きる意欲を呼び起こすかもしれません。

このツールがそんな方々への助けになることができれば幸いです。